第6回 ブランド品のリメイクはどこまで許されるか(商標法編1)

第6回 ブランド品のリメイクはどこまで許されるか(商標法編1)

近年、フリマアプリが広く普及しています。誰でも容易にハンドメイドの作品を販売できるようになりました。ブランド品は生地が丈夫ですし、なんと言ってもそのブランド力が顧客を誘引するということで、リメイク※1)の素材としても人気がありそうです。

しかし、多くの場合、ブランド品は商標権、意匠権、著作権等の知的財産権で保護されていますので、ブランド品のリメイクを製作・販売する場合には注意が必要です。

そこで、本コラムでは、ブランド品のリメイクがどのような知的財産権を侵害しうるか簡単にではありますが、順に検討していきます。

商標権について検討します。商標権とは、商品やサービスについて識別力を有するロゴマーク等に付与されている権利であり、特許庁での登録が必要です。著名なブランド品は、ロゴマークはもちろんのこと、生地等についてまで商標登録されていることがあります。

真正商品のブランド品の転売は多くの場合、問題になりません。適法に製造・譲渡された真正商品を転売する行為は、形式的には商標権侵害に該当する行為にあたるとしても、転売された商品は真正商品と「同一」性が保たれており、商標の機能である出所表示機能※2)及び品質保証機能※3)を害することがないため、その後の譲渡・輸入等行為については違法性がなく、商標権侵害は成立しない(最判平成15年2月27日判決平成14(受)1100)と考えられているからです。

上記判例では、真正商品と「同一」性がある限り、商標の機能を害しないという判断になりそうです。では、どのような行為であれば「同一」性が維持されるのでしょうか。

この点については、上記判例には明確な説明はありませんが、真正商品の機能、性質、形状を元の状態に戻す方向の作用を施したであれば、真正商品と「同一」性が維持されているとの評価を得やすいと考えられます。逆に、真正商品の元々の機能、性質、形状と離れる方向の作用を施すと、真正商品と「同一」性を欠いたと判断されやすくなるでしょう。そして、一般的にリメイクと言うと、真正商品の元々の機能、性質、形状と離れる方向の作用を加えることを意味しています。

そうすると、ブランド品と「同一」性を欠いたリメイク品を製作・販売した場合、ブランドの登録商標と同一または類似の指定商品に登録商標を使用したのであれば、商標権侵害に該当する行為にあたります。

そして、ブランド品のリメイク品を見た消費者が、商標権者が販売している真正商品であると誤解する可能性がありますので、出所表示機能を害することになりますし、また、ブランド品のリメイク品には商標権者の品質管理が及ばず、品質保証機能も害することになりますので、実質的にも違法性があり、商標権を侵害すると判断されるでしょう。

ブランド品のリメイク品を製作・販売する際には、多くの場合、特徴的なロゴマークや特徴的な生地部分を使用したいと考える人が多いと思われますが、特徴的な部分については、商標登録がされている可能性が高いと言えます。

ブランド品のリメイクを検討している人は、①リメイクの素材として利用しようとしている部分について商標登録がされていないか、②商標登録がされている場合であっても、リメイク品が指定商品と同一または類似となっていないかについて調査をしてから製作・販売をする必要があります。

商標法編2では、リメイク品が商標法上違法と判断された事案の紹介などを行う予定です。


(著)田村有加吏(東海大学 総合社会科学研究所 研究員・弁護士)
(監修)角田政芳(東海大学 総合社会科学研究所 所長)



※1) ここでは、既製品を加工・修理等して新たな商品に作り上げることと説明して検討を進めます。
※2) 出所表示機能:ある商標を付した商品・役務が一定の出所から出ていることを示す機能
※3) 品質保証機能:ある商標を付した商品・役務は同一の品質を有していることを保証する機能。