第4回 コスプレとは? ~その法律上の位置付け~

第4回 コスプレとは? ~その法律上の位置付け~

コスプレとは、コスチューム・プレイ (costume play) の略であり、「アニメやゲームなどに登場するキャラクターの仮装をすること」をいいます※1)。もともとは歴史演劇や歴史映画などを意味する用語でしたが、略称の「コスプレ」が一般化するようになってから、コスチュームを着て遊ぶという意味に転化したといわれています※2)

コスプレは、法的にみると、とりわけ著作権や肖像権・パブリシティ権との関係が問題になることが多いといえます。近時の実例として、任天堂㈱が、公道カートを顧客にレンタルする際にキャラクターのコスチュームを貸与するといった㈱マリカーの行為が著作権侵害に該当するなどと主張し、訴えを提起した事件が世間の耳目を集めました※3)

コスプレは、著作権法上は、コスプレイヤーがコスチュームを制作し、あるいはこれを着用してメイクアップやヘアセットなどをすることにより、原著作物であるアニメ、マンガ、ゲーム、映画などに登場するキャラクターを複製または翻案して二次利用する行為といえます※4)。したがって、コスプレは、原著作物であるアニメなどとの関係では、そのアニメなどの著作権者から許諾を得なければ著作権侵害となってしまう可能性があるという問題点があります(もちろん、私的使用目的複製など、著作権が制限された利用形態に当たる場合には、著作権侵害とはなりません。)。他方で、コスプレイヤーは、自ら創作したコスチューム、メイクアップおよびヘアセットなどについて、二次的著作物の著作者としての権利を獲得する可能性があると考えられます。

また、コスプレは、コスチュームあるいはコスプレイヤーを通じた原著作物の利用行為であると同時に、コスプレイヤーの容貌、姿態等を公衆に提示するという側面があります。したがって、たとえばコスプレイヤーを写真撮影したり、その写真をSNSにアップしたり、グッズに表示して販売したりするなどの利用をする場合には、肖像権やパブリシティ権の問題が生じます。

このように、コスプレを巡っては様々な権利が複合的に問題となりますが、これまで、理論的な整理はあまり行われてこなかったようです。コミケやアニメコンベンションを一目みれば分かるように、コスプレはマンガやアニメなどのコンテンツの利用形態として非常に高い人気があり、海外からも注目を集める日本文化の1つです。コスプレの適正な権利処理のあり方を明らかにすることが急務といえるでしょう。本ファッションローコラムでは、回を改め、引き続きコスプレに関する法律上の問題点を紹介していきます。


(著)関真也(TMI総合法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士)
(監修)角田政芳(東海大学 総合社会科学研究所 所長)



※1) ファッションビジネス学会監修「ファッションビジネス用語辞典」120頁(改訂第3版、日本ファッション教育振興協会、2017年)。
※2) 同上。
※3) 2017年2月24日付け任天堂㈱のニュースリリース
※4) 角田政芳=関真也『ファッションロー』227頁(勁草書房,2017年)。