第5回 ファッション・ショーとその保護

第5回 ファッション・ショーとその保護

ファッション・ショーの起源(fashion show)は、1846年にフランス・パリで絹織物店員がモデルにドレスを着せ顧客に披露し販売する方法を始めたことまでさかのぼることができるとされています※1)。今日では、ファッション・ショーは、「デザイナーの作品やメーカー、卸、小売りなどの新しい製品を、シーズンに先駆けて、ファッション・モデルを使い、ショー形式で発表する会」であるといわれています※2)

このファッション・ショーを構成するさまざまな要素が著作権法によって保護されるか、すなわちそれらの複製などが禁止されるかについて、裁判所は否定的な判断をしています※3)

しかし、フアッション・ショーのなかでも著作権法によって保護される可能性のあるものを複数発見することができます。例えば、ファッション・モデルがランウェイの上を歩く動作は舞踊の著作物として、またファッション・モデルのヘアスタイルやメイクアップ、衣服※4)のコーディネートも美術の著作物として、著作権によって保護されるとも考えることができます。なお、ファッション・ショーの構成要素ではありませんが、ファッション・ショーを撮影した写真または録画された動画も、写真の著作物や映画の著作物として保護されます。

また、ファッション・モデルは、ファッション・ショーでの行為について実演を行う者(実演家)として、著作隣接権によってその行為の録音や録画などから保護されます。ファッション・ショーのプロデューサーや演出家も、実演であるファッション・ショーを指揮し、または演出する者としてファッション・モデルと同様に実演家として著作隣接権による保護が認められることも考えられます。

裁判所は「Forever21事件・控訴審」で、以上のファッション・モデルの動作、ヘアスタイルやメイクアップ、被服のコーディネートの著作権による保護も、ファッション・モデルやファッション・ショーの演出家の行為の著作隣接権による保護も全面的に否定しています。この裁判所の解釈では、ファッション・ショーを構成する要素の保護は不十分なのでしょうか、それともその保護は過剰(過大)なのでしょうか、皆さんはどの様に思われるでしょうか。


(著)内田剛(東海大学 創造科学技術研究機構 助教)
(監修)角田政芳(東海大学 総合社会科学研究所 所長)



※1) 角田政芳=関真也『ファッションロー』28頁(勁草書房,2017年)(能津慧子「モードの社会史」(有斐閣,2004年)220頁、渡辺明日香『ストリートファッション論」(産業能率大学出版部,2011年)16頁を参照引用)。
※2) 大沼淳・荻村昭典・深井晃子監修『ファッション辞典』(文化出版局,2004年)268頁。
※3) 「Forever21事件控訴審」知財高判平成26年8月28日・平成25年(ネ)第10068号
※4) 衣服、アクセサリー、靴等のファッション・プロダクトの保護については、本コラム第2回 ファッションデザインの保護に関する法律の沿革を参照してください。